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山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

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精神医療ことはじめEssay

No.85

突感情・行動を支配するもの 

一般に、私たちの感情や行動は、どうしてこう感じるのか、なぜそうするのか、自分ではちゃんと分かっていて説明することができます。
ところが、自分の感情・行動でありながら、自分ではどうしてそうなるのか分からないことがあります。


 解剖学者の養老孟司が以前『おやじのせなか』という新聞の連載コラムに、次のようなことを書いていました。

「私は子供の頃、近所の人が挨拶しても満足に挨拶を返せず、人からは変に思われ、自分でも半端者だと思っていた。
だから医学部を出たものの、人を相手にするのは無理だろうと思い解剖学に進んだ。
ある日、通勤電車の中で、ふと、私が4歳の時、結核のため34歳で亡くなった父のことを思い出した。
親戚の者に、臨終の父の枕元に呼ばれ、『最後の挨拶をしなさい』と言われたが、私は挨拶もせず逃げ出した。幼い私にとって、最後の挨拶をすることは父の死を認めることで、私はそれが受け入れられず、挨拶できなかったのだ。その時から私は誰にも挨拶のできない子になった。そう気づいたら、電車の中ではらはらと涙が落ちた。その時、私の中で父は本当に死んだのだった」

 「無意識」を説明して余すところがありません。見事な、そして美しい自己洞察です。

 さらに、この洞察を分析すると、養老孟司が父の年齢を超えて自立し、あたかも父が「もう私が一緒でなくても大丈夫だね」と言うような、そんな時に洞察したのかな、と思うのです。



 わきて見む
 老い木は花もあはれなり
 今いくたびか春にあふべき

           西行




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