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老人の睡眠
『吾輩は猫である』に迷亭君の伯父が「若い頃は早起きには苦労したが、長年の修行でようやく苦もなく起きられるようになった」と言ったのをからかう場面があります。
迷亭君が苦沙弥先生に「早く起きられるようになったのじゃない。早く目が覚めてしまうのさ」と言います。
全くその通りで、若い頃は「宵っ張りの朝寝坊」、年をとると「早寝早起き」。
これを睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群と言います。
睡眠相―つまり、寝ている時間帯―が次第に遅くなるのが若者、次第に早くなるのが年寄りという訳です。
年をとると段々早く寝て、午後7時、午後5時、さらに早くなって午前10……と進んで、ついに午前2時になれば若者と同じですが、なぜかそこには至らず、午後7〜9時のままになります。
そして早く起きますので、朝や昼に眠くなりうとうとします。
すると、若者の目には、年寄りはいつも寝ている、と写ります。
実はいつも寝ているのではなく、何度も寝ているのです。
赤ちゃんの時には何度も寝る多相性睡眠ですが、成長と共に学校・会社もあり1回寝るだけの単相性睡眠になります。
さらに年を取り社会的制約もなくなると、生理機能の変化とも相俟って多相性睡眠になっていきます。それで良いと思います。
一日の睡眠が一日でとれれば良いので1回で取らなくて良いのです。
早寝早起き、朝寝、昼寝、うたた寝……それなりの幸せな睡眠です。
うしろすがたの
しぐれてゆくか
山頭火
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