山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.76

すべては疑いうる 

所変われば品変わる。
普段私たちが当たり前だと思っていたことも別の人が見れば、あれっ？と思われることがしばしばあります。

よくテレビで「外国人が見た日本の不思議」などという番組をやっていますが、あれは文化間の“あれっ？”を示してくれます。
　たとえば、
「日本人はちゃんと一列に並ぶ。すごい！」
「日本人は平気で電車で眠っている。すごい！不用心！」
「デートで男性を見つけた女性が小走りでそばに行く。かわいい！」
などと指摘されると、自分たちの考えや行動が必ずしも普通のこと、自然なことではないのがわかります。

　こういったずれ・違いは大きく国と国との文化間のことばかりでなく、日本の中でも地方と地方の間、さらには人と人の間でもあります。

　安部公房の『鉛の卵』という小編に労働を嫌悪する植物人間が登場し、主人公を混乱させ、さげすみ惨めな気持ちにさせます。
最後はどんでん返しがありますが、普段私たちが感じ考えていることが本当に正しいのか、一定の文化に結合しているだけの世界観、価値観じゃないのか、と我が身を振り返り反省させてくれます。

　一定の文化故(ゆえ)に出現する精神疾患を文化結合症候群と言います。
さて、引きこもり、拒食症、自傷行為、対人恐怖などは文化結合症候群でしょうか、個人の問題でしょうか？考えさせられますね。

……雲からも風からも
透明な力が
そのこどもに
うつれ……
　　　　　賢治

---