山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.73

薬の効用

前々回、小欄で一九五〇年代、精神医療に薬物療法が本格的に導入された話をしました。今回はその補足。
　精神医療は薬物療法が主流になりましたが、その薬物がどのように効くのか、なぜ効くのか……そんなことを研究するのが精神薬理学という学問です。
　そして、それを勉強していると次のような感想を持ちます。
　結局、私たちは―私たちの脳は―そういう薬が効くようにできているのだ、ということです（盲信するのではなく、一定の及び腰の姿勢は必要ですが）。
　つまり、私たちの脳は治るようにできているのだから、適切な治療、適切な薬があれば、精神疾患は治る、ということです。
　その治るようにできている脳を、治るように―その方の自然治癒力を引き出すように―援助するのが薬物療法じゃないか、そう思うのです。
　そして、その治癒力を妨げている要因をできるだけ減らすのが環境調整、精神療法ということになるのかな、と思います。

　さて、時に、精神療法ならぬ詭弁もあって―
　お金持ち「先生、ちっとも眠れませんよ」
　医師　　「頑固な不眠ですね」
　お金持ち「何とかして下さい」
　医師　　「幸い、あなたには有り余るお金があります」
　お金持ち「それがどうしたというのです」
　医師　　「それで美人秘書を雇ってそばにおくのです」
　お金持ち「それで眠れるのかね」
　医師　　「いえ。でも起きているのが楽しくなります」


吉野山
去年(こぞ)の枝折(しを)りの道かへて
まだ見ぬ方の花を尋ねむ
　　　　　　　　　　西行

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