山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.7

心と言葉

　精神科では心（脳の機能）を対象にして診療していますが、では、患者さんの心の状態をどうやって知るのでしょうか？

　手がかりは何より患者さんを前にした時の第一印象です。
まず服装、態度、表情などに注意が行きます。それから患者さんの陳述に耳を傾けますが、ここでは言葉と同時に言葉を話すトーンが気になります。そして、総合的に患者さんの心の状態を推理します。
言葉だけで心の状態を判断することはありません。

一方、私たちは「悲しい」「淋しい」という言葉を聞いて、その人の悲しさ、淋しさを知るのでしょうか？
「悲しい」「淋しい」と言われなかったら、その人の悲しさ、淋しさは伝わらないのでしょうか？
さらに「悲しい」「淋しい」と言われたら、その人の悲しさ、淋しさは私たちに伝わるのでしょうか？　　

心の状態を知ろうとする時、そんな心と言葉の関係、乖離をいつも考えます。

　ところで、私たちはほんとうに心を通じさせたい時、つくづく言葉の無力を感じないでしょうか？
言葉で表せないものを言葉で表そうとするジレンマに襲われないでしょうか？

結局、言葉を尽くしても、心が通じなかったら言葉は通じない、そんなこともあるのでしょう。

　そうそう、かわいい女の子から涙を浮かべて「○○君のバカ！」と言われて、「俺はバカだろうか」と考え込む無粋な人はいないでしょうね。それじゃ、心も言葉もありゃしないですからね。

（2009/08/02）

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