山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.66

了解と説明

ヤスパース（1883～1969）は人間の心理を理解するために、人間の心理を次の二つに分けて考えることを提案しています。
　①了解できるもの
　たとえば、悲しんでいる人がいたとします。聞くと、その人が最近家族を亡くしたとのこと。すると、私たちにはこの人の悲しみは腑に落ち了解可能で納得できます。
　②説明しかできないもの
　やはり、うち沈んでいる人がいます。聞いてみても、どうしてそうなるのかさっぱり分かりません。その場合、その憂鬱はうつ病のためかも知れません。
つまり、その憂鬱は心理的には了解できず、脳の病気のせいかも知れないとただ説明できるだけです。
　このように、人間の心理には十分納得できるものと、どうしてそうなるのか分からない、ただ説明ができるだけのものがある、とヤスパースは言います。
これは説得力があります。若きヤスパースの天才的ひらめきを感じます。
　このように分けて考えることで、人間の心理が整理され、その理解の基礎が与えられ、正常と異常の理解が進んで来ました。
ここでも「分かる」ためには「分けない」と駄目で「分ける」ことで「分かってくる」のが「分かり」ます。
やはり、「分かる」と「分ける」は語源が一緒なんですね。
　ちなみに「分からない」というのは「分けられない」、つまり、混沌としたままのことです。
混沌とした人間心理を分けて整理した先人の偉大さを思います。

　人間は体を通じて生きているのであって、体のために生きているのではない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヤスパース


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