本文へスキップ

山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

ご予約・お問い合わせはTEL.0258-83-1771

〒947-0042 新潟県小千谷市平沢1-5-26

精神医療ことはじめEssay

No.61

コタール症候群

妄想はすべからく奇妙なものだとはいえ、特に奇妙で、どう理解しようとしてもできず、ただ、これこれと記録することしかできない、そんな妄想があります。
 その一つ、コタール症候群。
永遠妄想、不死妄想あるいは虚無妄想とも言います。
 およそ四半世紀前、私が大学精神科に入局したところ、初老の紳士風の入院患者さんがいました。教授回診の時、若い主治医が教授に、
「まだ、コタール症候群が続いていて……」
などと説明していました。
 いかにも知的な―少なくとも主治医や私よりは知的な―印象の患者さんの表情は暗く辛そうで、明らかに会話もしたくない様子でした。
教授はそれを察してか簡単に挨拶して部屋を出ました。
その後、主治医から、その患者さんが便器にがつんがつんと頭をぶつけて自殺を図り、
「俺は死ねない!この苦しみは永遠に続くのだ!俺の脳は腐ったのだ!」
と顔面血だらけにして言っていた、と知らされました。
 教科書で知っていたとはいえ、こんな妄想が実際にあるのだとひどく衝撃を受け、人間の可能性と危うさを痛切に感じました。
 自分は天才だ、大金持ちだという妄想ならまだ幸せかも知れませんが、こんな妄想は想像するだにごめんですね。
永遠にずっとずっと冬が続く、と思うようなもんですから。

(問)何が悲しゅうて、こんな雪の深いところに住んでいるのか?
(答)春の山菜があまりにおいしいから!

春になる
さくらが枝は何となく
花なけれども(むつ)まじきかな

                 西行


このページの先頭へ

山下メンタルクリニック山下メンタルクリニック

〒947-0042
新潟県小千谷市平沢1-5-26
TEL 0258-83-1771
FAX 0258-83-1787

inserted by FC2 system