山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.60

積み重なれば変わる

パニック障害、あるいは社会不安障害という精神疾患があります。
これらの疾患は薬物療法と共に認知行動療法が有効ですが、治療法に軽重があり、おおむねパニック障害では薬物療法が、社会不安障害では認知行動療法が主になります。
この認知行動療法を実践している患者さんを見ていますとつくづく、「量の変化がやがて質の変化を生む」というのを実感します。
　数年前、人の視線を浴びるのが怖くて、買い物でレジに並ぶのも嫌、授業参観でも人の後ろにいるようにするという人が、いよいよ追い詰められて受診されました。
お聞きすると、保育園の保護者会の役員選挙で、ある人が本人を名指しして「○○さんが副会長をやって下さるならやっても良いです」と発言され、園長先生からも頼まれ、つい引き受けたというのです。
３人目のお子さんがまた世話になるという恩返しの気持ちもあったそうです。
この患者さんが私の期待以上に自分で工夫して少しずつステップアップ、認知行動療法を続けていったのです。
　１年を過ぎる頃には近況報告のためだけにお出ででしたが、ある日、「今度、小学校の副会長に立候補しました」と仰います。嬉しい驚きでした。積み重なれば変わる。やがて、治療終了になりました。

　冬の一日一日もそうです。
相変わらず厳しい一日一日の繰り返しのように見えます。
しかし、量から質の変化。積み重なれば変わる。やがて春が来ます！

豪雪地の感覚ではないですが―
冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『枕草子』


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