山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.6

原因がないから治る？ 

精神科では心を病んで患者さんが来られます。「気分が沈む」「何もやる気になれない」「何をやっても楽しくない」……そんな症状を訴えられることがあります。うつ状態です。

ところで、親が亡くなってもうつ状態になります。
それと「うつ病」のうつ状態とどう違うのでしょうか？興味深い問題です。
そんなことを研究する学問が精神病理学です。

うつ状態の患者さんを目の前にした時、こうなるまでの患者さんの人生のストーリーを組み立てます（現病歴と言います）。
そして、現在の症状をつぶさに見て（現在症と言います）経過との関係・整合性を考えます。

現在のうつ状態が、こうなるのも無理はないと了解できる場合と、なかなか納得できない場合があります。

普通、親しい方が亡くなって気分が落ち込んだ時（死別反応と言います）、原因があるわけで、本人も周囲もやむを得ないものとして受け入れ回復を待ちます。
ところが、「うつ病」のうつ状態は原因がないことがほとんどで、本人も周囲もどうしてこうなるのかわからず悩みます。

ちょっと逆説的ですが、実は原因がないから治るのです。
親が亡くなって悲しい場合は親が生き返らないと駄目ですが、原因がない場合は脳の問題ですから薬で治るのです。
面白いですね。

いかなるゆえにわが心

かくも悩むか知らぬこそ

悩みのうちの悩みなれ

ベルレーヌ「都に雨のふるごとく」より

　　　　　　　（2009/07/17）

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