山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.57

認知療法―その１～自分への否定的認知～

以前小欄で認知療法の話をしたことがあります。
簡単に繰り返しますと、認知療法の原理は「出来事のせいで感情が生じるのではなく、出来事の認知の仕方で感情が生じる」ということで、従って、認知の仕方を合理的なものに変えることで感情・行動を適切なものに変えようというのが認知療法です。

　認知療法はアーロン・ベックが提唱した簡明で優れた精神療法ですが、ベックは「人を不幸にする否定的認知」の代表として、①自分への否定的認知、②周囲への否定的認知、③将来への否定的認知を挙げています。

　今回は「自分への否定的認知」を取り上げます。これはすぐに「俺は駄目な人間だ。役立たずだ」などと決めつけて不幸になることをいいます。
自分に自信がなく自己評価が低い人が侵されやすい感情です。私がそうです。
それで最近、私が自分に施している認知療法―

　講演中、眠っている人がいる（出来事）
　　　　↓
　俺の話はつまらない！貴重な時間をとって申し訳ない（反射的な自動思考）
　　　　↓
　待てよ！起きている人もいる！メモを取っている人までいる！（合理的な認知）
　　　　↓
　どんな薬でも効く人と効かない人がいるんだ！
　　　　↓
　役に立った人もいる！睡眠薬代わりにもなった！

……と、こんな具合です。

この秋は何で年寄る雲に鳥
　　　　　　　　　　　　　　芭蕉