山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.53

DSM-5

今年５月、アメリカ精神医学会監修『精神疾患の診断・統計マニュアル』第５版―通称ＤＳＭ(ディエスエム)-５(ファイブ)）が刊行されました。
４版が出たのが９４年ですから、約２０年ぶりの改訂です。

　これは題名のように精神疾患を診断・分類するためのマニュアルで、多くの国の代表的な精神科医の協力のもとに作られています。
精神科医はこの本によって世界の標準的な診断・分類を知り、それを個々の診療に生かすことができます。

　これを読んでつくづく感動するのは、かつて「狐憑き」「悪魔つき」「魔女」などと偏見を込めて呼ばれ、奇妙で不気味な現象と思われてきた精神疾患が誤解・偏見を打ち破り白日の下、医学の対象として正当に対処することを要請していることです。
　長い歴史があって今がある、一朝一夕にはできないけど確実に進んできている、としみじみ思います（いやあ、いい時代ですねえ！）。

　ＤＳＭ-５にも課題はあるでしょうが、ひとつの大きな達成に違いないと思います。これは単なる「マニュアル」（手引き）であるにとどまらず、今後じわりと精神医療、精神医学全体に浸透していくことが予想され、私には精神疾患の海を渡る新たな羅針盤を得た思いがします。
　さて、これを座右に希望を持って一歩一歩進みましょう。
　
風光り、雲光り、新樹光る日々

　　　「はるかなる山河に」より