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山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

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精神医療ことはじめEssay

No.50

郷愁反応

郷愁反応―そのものずばりの、今では使われなくなった疾患名です。
今だと味も素っ気もなく、マニュアル的診断で「適応障害」と呼ばれます。
 ふるさとを離れ、母から離れ、淋しさや望郷の念から不安、抑うつ、昏迷などの症状が出る病気です。
 竹田の子守歌、五木の子守歌の世界です。
 蝶のような私の郷愁!
         三好達治
ですね。

 精神科に志して5年くらいの頃、一度だけ診たことがあります。
その時は「郷愁反応」という疾患名は知らず、「心因反応」(これも味も素っ気もありません。“反応”という部分に若干の味わいがありますが)と診断しましたが。

 中学を出て数ヶ月の少女でした。
 家の事情で(つまり、貧しさのため)、他県で働きながら電車で定時制高校に通っていたのですが、あるとき、目的の駅で降り忘れて(・・・・・)通り過ぎたのです。
その時は気づいて引き返しました。
 ところが、その数ヶ月後、今度は新幹線に乗っているところを検札の係員が見つけました。
問いただしますがぼおっとしてほとんど応答できません。
ようやく身元が分かり、家族が迎えに行き、数日後、お母さんと共に私のところにお出でになりました。

 幼げで発達心理学的には母子分離がまだできてないとも言えますが、私はその子の気持ち、その子にとってのお母さんの意味が胸をうちました。
 その子にとってお母さんがふるさとで郷愁反応を起こすくらいの存在だったのです。残念ながらお父さんだとそうはなりませんね。

 病のごと
 思郷のこころ湧く日なり
 目にあをぞらの煙かなしも

           啄木

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