山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.43

ただシンプルに

オリンピックの重量挙げを見て感動しました。
　種も仕掛けもなく裸一貫、ただ力持ちを競っていました。
なんて外連味(けれんみ)なくシンプルなんだろう！
　ふと、遠い昔、ギリシアで行われたオリンピックに思いを馳せました。
オリンピックは単純に「より速く、より高く、より強く」、これで良いじゃないか、そう思いました。

　ところで、そんなシンプルさとは反対に、外交官・弁護士でもないのに人の言動を素直に受け取れず、
「あいつ、毎日暑いね、って言ってたけど、なぜ、そんなことを言うんだろう？」
「あの人が右を向いて笑ったけど、あれは、どういう意味なんだろう？」
などと考え過ぎる症状があります。
　人のちょっとした言葉、仕草に意味をかぎつけ、そのままに受け取れず、何か意味深長なサインのように感じ、自分に関係づけて解釈します。
　統合失調症の症状で「理由なき関係づけ」と言われ、「アポフェニー（異常意味顕現）」という状態です。
　こうなると、何に対しても気楽にやり過ごすことができず、いつもぴりぴりして不安、緊張の中に置かれ、休まる時間がなくなります。
外に出るのも怖くなり引きこもり、疲れ果て眠りたくなります。

　考えすぎなくて良いのに、シンプルに素直にその通りに受け止めれば良いのに、と思うのです。
　オリンピックの重量挙げを見ているうちにそんなことも考えました。


　さりげなく言ひし言葉は
　さりげなく君も聴きつらむ
　 それだけのこと
　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　啄木