山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.41

病気か性格か

私のところに来られる患者さん、あるいはご家族がよく「先生、これって病気なんですか？性格なんですか？」と訊かれます。
　私もよく分からず、患者さんを前にして「一体、この症状のどこまでが性格で、どこからが病気なんだろう？」としばしば考えます。
特に強迫性障害、社会不安障害、心気症、身体表現性障害……などのときがそうです。 　病気か性格か判断するとき、
　①患者さんの生活史を振り返ってみて、なだらかに続いているなら性格、ある時点から屈折しているなら病気
　②患者さんがそれほど悩まず自我親和的（違和感がなく自然に受け入れられる）なら性格、自分でも悩み変だと自我違和的に受け止めているなら病気
　大体そんな風に考えます。
　ところで、患者さんあるいはご家族が「病気か性格か」と訊くときには大抵「病気は治るが性格は治らない」という含意があります。実は私もそう思っていました。
　精神科医に成り立ての頃、長い廊下を老教授と歩きながらある患者さんの治療の話をしていました。
私：症状のほとんどが性格からと思われますので、治らないでしょう。
教授：（しばし沈黙の後）性格も治りますよ。ただ時間がかかるだけです。
私：……
教授：私は自分の性格を治したいと思ってきました。今もそう思っています。
　年取って精神科に志した新人の私にしんみり言われ、今も記憶に鮮明です。
　性格も治る。治りたいなら治る。今はそう思っています。