山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.38

心と頭

気分が落ち込むと、どうしても自分が駄目な人間と思えて仕方なくなることがあります。
自分は役立たずだ、世の中にいない方がいい人間だ、などと思ってしまいます。
　こんな理由なき無価値感などを系統的に修正し、気分を明るくし人生に希望を持って向かえるようにするのが認知療法ですが、私はそんな気分に襲われた時には、
「○○を見ろ！あんな奴が生きているのだ！何をくよくよ俺は悩んでいるんだ！」
と自分に言い聞かせてきました。簡単な認知療法ですね（皆さんは、この○○に好きな―というか嫌いな―人物を適宜当てはめて下さい）。
　この認知療法の過程で「頭では分かっているけど……」という、何か腹で分かっていない、腑に落ちないという時期があります。頭と心の乖離です。
それがいつしか徐々に統合され、心から納得できるようになります。
　これが重症になると妄想レベルになり、根拠もなく「自分は罪深い救済なき人間だ」などと思い詰め、警察署に出かけて「逮捕して下さい」などと言ったりします。罪業妄想といいます。
　こうなるともう心は頭を凌駕し理屈で説いても聞いてもらえません。
認知療法は届かず、ここから先は薬物療法の出番です（この薬物療法が効くから人間は分からない）。
　心と頭、その乖離と統合、いろいろありますが、今回はこれにて。

愛を釣るとき

　餌にすべきは
　
　君の心だ

　頭ではない
　　　　　　　　　　　　　マーク・トウェイン