山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.25

季節との調和 

うつ病の時、ごく重症だと「嬉しい、悲しい」など全く感じず身体も動かず、茫然と立ちすくむことがあります。うつ病性昏迷といいます。

また、やや重い状態だと、明るい季節、明るい時間、明るい雰囲気を辛く感じることがあります。その明るさが自分の気分に調和せず自分を異質に感じるからでしょう。
春よりも秋、結婚式より葬式、ハワイよりシベリアの方が落ち着くのです。

よく「木の芽時」と言いますね。物みな寝静まった冬から春になり、木々の芽がふくらむ明るい季節になるのですが、その明るさがくせ者なのです。
木の芽時にうつ病になるというより、うつ病の時に木の芽時になると、その明るさが気分に調和せず辛くなるのです。

一方、うつ病も軽くなってくると、明るさに同調して気持ちも楽になります。春が嬉しくなります。

そうなれば、しめたもので、うつ病は時間と共に良くなるのが期待できます。
そんな患者さんを診ていると、ふっと、患者さんが季節とシンクロナイズしているな、人間も自然の一部なんだな、とつくづく思います。

長く厳しい冬、でも、必ず春が来る！この季節の動き、天の動きを信じられればこそ希望を持って生きられます。

「うつ病は必ず治る！」、そう信じられればこそ、治療を続けられます。

ある患者さん曰く「先生、治る、治るって、もう10年言われていますよ」私はガリレオのように「だが、地球は動く」でなく「でも、治るんですよ！」と言い続けます。

　どんなに長い夜も

　いつかはきっと明けるのだ。

　　　　　　シェイクスピア

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