山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.23

人生の総和 

　私は講演の時、前置きで、「医療では精神科以外の診療科を身体科と言うことがあります。
身体科が臓器・体を診るとしたら、精神科は人間・人生を診ていると言えます」と言い、さらに「身体科は体を支え、精神科は人生を支えていると言えます」と大見得を切ることがあります。

　そんなことと、昨年初頭に社会不安障害（人前での行為に著しく不安・緊張を感じる、あがり性、内気が高じたような病気）の患者さんを何人も診ているうちに「人生の総和」ということを考えるようになりました。

　社会不安障害の患者さんは人前で話したり、食べたり、書いたりするのにひどく苦痛を感じ、ついにはそんな場面を避けて引きこもったり、昇進や異性と付き合うチャンスを逃したりします。

　そんなことで良いのか！あたら人生を砂を噛むような灰色の日々にして良いのか！と思います。　　

従来、医療は寿命を延ばすことを使命としてきました。これは人生の横軸です。
精神科は人生の縦軸＝人生の質ＱＯＬを高める努力をしています。
そして、医療全体で「寿命×人生の質」＝人生の総和を大きくしようとしています。

　社会不安障害の患者さんは、それで死ぬ訳ではありませんが（大体が、精神疾患そのもので死ぬ訳ではありません）、人生の質ＱＯＬを大きく損ない、人生の総和を小さくしています。これを何とかしたいと改めて思います。

「一生に二度とは帰って来ない命の一秒だ。おれはその一秒がいとしい……」（啄木）

　今年、皆様の一年が豊かな一年になりますように！

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