山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.21

治した？治った？

精神科で仕事をしていると、なぜ良くなったのか分からないのに、悪くなった理由だけは分かることがあります。

　それで結局、良くなったのは患者さんの治癒力、悪くなったのは自分のせいと思うことになります。

ですから、治療を終了して感謝されるたびに「いえいえ、治ったのはあなたの治癒力であって自然の経過、私はそうなるよう援助した（しようとした）だけ」と思います。

精神疾患が改善するのは、いろいろな条件が相俟って総合的に改善の方向に働いて初めて可能になるのであり、医療はその一環でしかありません。一方、その一つでもうまく行かないと悪化することがあります。

考えてみれば、人間は生物学的な存在であると同時に心理的、社会的存在でもあるわけで、きわめて人間的病（やまい）である精神疾患が、医療も含めた総合的な力が働いて初めて改善するというのは当然のことなのでしょう。

それでいつも「治した」というより「治った」という気持ちになるのでしょう。

大体、ほとんどの物事はうまくいくのは総合的、悪くなるのは一点でも、なのです。

　電車が時間通りに動くのは、きちんと電車を整備して、運転手も時間通りに出勤して、体調も万全で、電気もちゃんと来て……そんなことがすべてそろってこそ可能なのであって、たとえば、運転手が来ない、電気が来ない、電車がない、線路がない……など一つが起きても電車は動かないのです。
ここでも、悪くなる原因だけは分かるのですね。

う〜ん、せめて、医療が悪化の原因にだけはならないようにしなくちゃ！

---