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ミュンヒハウゼン症候群
―また―
『ほら吹き男爵の冒険』はほら吹き男爵ことミュンヒハウゼン男爵が話したものをまとめた本ですが、本の中にこんな話があります―
男爵の行く手の池に野ガモが数十羽てんでんばらばらに泳いでいる。
男爵の散弾銃には弾は一発だけ。
一網打尽にしたいが一発撃てば野ガモはみな飛び立ってしまう。
そこで男爵は考えた。
長い紐の先にベーコンを結び付け池に投げ入れる。
するとカモはすいすい寄ってきてベーコンをぱくり。
ベーコンは脂でつるつるしているので消化されず紐もろとも尻から出てきて、それを次のカモがぱくり、またつるりと出てきて次のカモがぱくり……
こうしてカモは数珠つなぎにみんなつかまった。
こんな大法螺、荒唐無稽、奇想天外の話が続く本です。
18世紀の実在男爵の話です。
さて、時は1951年。
イギリスの内科医アッシャーが『ランセット』に、入院を続けたりいくつも病院を渡り歩くために長い病歴を捏造・偽装する症例を報告し、これに「ミュンヒハウゼン症候群」と名付けました。
こういう患者はとても話術が巧みで病気のことも熟知し、時に経験豊富な医師もだまされます。
中には腹痛を訴えて何回も腹部手術を受け、グリッドアイアン・アブドーメン(焼き網状の腹)と呼ばれる状態になる人もいて、これをポリサージャリー(頻回手術症)といいます。
ミュンヒハウゼン症候群。味わい深く名付けて妙です。
今では虚偽性障害と言いますが無味乾燥ですね。
草の戸も
住み替る代ぞ雛の家
芭蕉
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