山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.155

スペクトラム　

筆者は以前、本欄で「自閉症スペクトラム障害ＡＳＤ」という診断名はとても考えさせられると書きました。

　虹が赤→橙(だいだい)→黄→緑→青→藍→紫と連続的に色のグラデーションを示すように、自閉症もスペクトラムで『レインマン』のような自閉症から、ちょっと自閉症的なものまで切れ目なく連続的なものであるという、その診断概念に考えさせられたのです。

　診断というのは本来くくり(．．．)（カテゴリー）ですから、「骨折」「水虫」のように、くっきりしたものであるはずなのに、それをグラデーションでまとめたことに考えさせられたのが、まずひとつ。

　もうひとつ。
　それはＡＳＤという診断をじっと見ると、ＡＳＤの薄いものは連続的に私たちの中に溶け込んでいるということにも気づかされるということです。

　近年話題の『大人の発達障害』の背景にはこのＡＳＤの診断概念があるのだなあ……などと考えていたところ―男と女もそんなにはっきり区別できるものでないことが分かってきたというのです。

　100％男から100％女へとスペクトラムを描くと、私たちはそのいずれかの位置にいるというのです。
　性スペクトラムと言います。驚きましたが説得力も感じます。
　性的少数者ＬＧＢＴもこの性スペクトラムのどこかに位置しているのかな、と考えることでよりＬＧＢＴの理解が進むように思えます。

　さらに、いろいろなことがスペクトラムなのだなあ、としみじみ思われるのです。


最上川逆白波(さかしらなみ)のたつまでに
ふぶく夕(ゆうべ)となりにけるかも
　　　　　　　茂吉

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