山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.152

頑張れ！は禁句　

前回、うつ病の時、気分転換・気晴らしは駄目、というお話をしましたが、今回はその続きで「頑張れ！」はうつ病には禁句というお話です。

　多くの人は、うつ病の時、「頑張れ！」「元気を出せ！」は禁句というのを聞いたことがあると思います。
これはどうしてでしょうか。
どうして、そのように励ましてはいけないのでしょうか？

　実は、うつ病は頑張れない、元気の出ない病気だからです。

　それはちょうど─

・高血圧症の人に「どうして血圧が高いんだ！」
・糖尿病の人に「ちゃんと血糖値を下げろよ！」
・認知症の人に「何度言ったら分かるんだ！」

と言うようなものです。

血圧が高いのは高血圧症の症状で（いつも血圧が高いから高血圧症というのです）、
血糖値が高いのは糖尿病の症状、
何度言われてもすぐに忘れるのは認知症の症状です。

　そんな症状を治せというのは高血圧症・糖尿病・認知症を治せ、早く治せ、すぐ治せ、と迫られるようなものです。
「お代官様、ご無体な！」と言いたくなります。

　うつ病で頑張れない、元気の出ない時、無邪気な女性から
「元気出してね！」「ファイト！」などと言われると、
「根性でうつ病を治せ！」と言われるようなもので、もう絶望的な気分になります。

　昔、一万ｍのトラックレースで死力を尽くしてゴールに倒れこんで息をついていたら、コーチから「もう一周だ！」と怒鳴られ慌ててトラックに戻った外国選手がいましたが、それより辛いでしょうね。


友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻とたしなむ
　　　　　　　　　啄木

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