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山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

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精神医療ことはじめEssay

No.15

感情移入して…

 患者さんを目の前にした時、しばしば、自分を患者さんの立場に置き換えて、患者さんの思考、感情を追体験しようとします。そうすることで、より患者さんを理解しようとします。感情移入と言います。

ちょっと距離をとって、患者さんを観察するように見る時と、患者さんに共感し、さらに一歩進んで、患者さんの気持ちになりきるような時があります。

そんなことを続けているせいでしょうか、こんなこともあります。

警察「○○警察ですが、先生は△△の主治医ですね?」

(胸騒ぎを覚えながら)「はい、そうです」

警察「△△ですが、痴漢で逮捕しました。それで、先生から……云々」

「どうも、すみません…」

患者さんが悪いことをすると、あたかも自分が悪いことをしたような気分になります。

「私の不行き届きのために」

「私の治療が悪いばっかりに」

などと謝りたくなります。

 こんなこともあります。

入院中の末期癌の方が退院して通院治療にしたい、と言うのです。自殺も懸念され、主治医は当院通院を条件に希望を受け入れました。

退院後、小康を得て、当院にも通院しながら穏やかな時間が過ぎました。

しかし、年が明けて病状は悪化、入院になりました。毎週見舞いに行くと、静かに笑顔を浮かべていました。

ある日の見舞いの帰り、ふと「これが最後かも知れない」と胸を過ぎりました。そして、感情移入したのです。

いちはつの花咲き出でて

わが目には

今年ばかりの春行かんとす

          子規

実際は、もう一回逢い、それが最後になりました。


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