山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.136

オーファン・ドラッグ　

新型コロナウイルスに対しても、インフルエンザウイルス同様、リレンザやタミフルのような治療薬、あるいはワクチンが開発されれば、こんな騒ぎにはならなかったと思うのですが、“新型”ですから手探りで仕方ないことです。

　国・地域を越えて広がるパンデミックともなれば、その患者者数は何百・何千万人にも及び、影響は甚大です。

　すると、下世話な話ですが、治療薬・ワクチンを開発する製薬会社は力が入ります。

　繰り返し流行するインフルエンザはチャップリンの『キッド』の窓ガラスを割るキッドのような可愛い相棒に見えます。


　さて、オーファン・ドラッグ。

　これは対象患者が少ない疾患に対する薬のことで、オーファンｏｒｐｈａｎとは孤児という意味です。
つまり、希少疾病用の薬は開発コストがかかる割には見返りが少ないため、製薬会社は開発に積極的でなく、見捨てられた孤児のような薬という意味でそう呼ばれました。


　４〜５年前、Ａ製薬会社の情報担当者ＭＲの方が来られ、抗うつ薬の嚆矢と言われる薬イミプラミンを販売しているといいます。
６０年以上の歴史のある薬で、まず新しい情報はなく、言われなくても使うときは使う薬なのに、とつい奇特に思い話し込みました。

ＭＲさん曰く、
「当社はハンチントン病の薬を開発・販売しています」

私ははっとして、
「それはオーファン・ドラッグでしょう。志ですね」と褒めました。
ＭＲさんも嬉しそうな表情です。

　これは胸を張れる誇りでしょう。

　こんな触れ合いは治療への勇気を与えてくれます。



潮(しほ)かをる北の浜辺の
砂山のかの浜(はま)薔薇(なす)よ
今年も咲けるや
　　　　　　　　啄木

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