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良寛の涙
良寛60歳の頃、弟
訪問の趣旨は、由之の後を継いで橘屋当主となった長男馬之助の放蕩を諫めてもらえないかとのこと。
良寛は、自分は長男でありながら出家し、家督を由之に任せたこともあり、その願いを断ることはできなかった。
後日、良寛は生家橘屋に出かけ、そのまま逗留した。
しかし、一日が過ぎ二日が過ぎても良寛は何も言わない。
そして、三日目の朝、良寛はついに何も言わずにいとまを告げ、玄関で
「馬之助や、手が震えてよう結べん。結わえておくれでないかえ」
馬之助は
見上げると、じっと馬之助を見る良寛の目に涙があふれ頬を伝わっている。
良寛は無言のまま立ち去るが、その後、馬之助の生活はにわかに改まったという。
何とも良寛らしい逸話ですが、精神科的には一級の精神療法に思えます。
特に三日目の別れというのが注意を引きます。
一日目は何も言わず、二日目も言わず(実は言えなかったのでしょうが)、三日目も無言で帰ろうとするその時、あふれる思いが涙になって出た、ということ。
この一日、二日がなかったら三日にはつながらなかったでしょう。
このように待って機が熟し、良寛と馬之助、正に
私なら開口一番、「こら!馬!」とやりそうで、自戒。
焚くほどは
風が持て来る
落ち葉かな
良寛
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