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山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

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精神医療ことはじめEssay

No.13

物と心 

 肺炎や骨折でしたら、治療は一本道です。性別や年齢などほとんど考慮されません。
いわんや、その人が内気だとか囲碁が趣味だとか(私みたいですね)、学生だとか主婦だとかはいっさい関係なく治療は進みます。

 精神疾患の治療は違います。
その人がどんな人であるか、どんな経歴の人か、どんな状況にある人か……などに強い関心を持ちます。
ですから、ついいろいろ聞くことになります。趣味・楽しみなどはたいてい聞きます。

「どうして、そんなことまで聞くのですか?」と聞かれることもあります。
そんな時、私の脳裏を過(よ)ぎるのは、マルクスの愛した言葉、
「およそ、人間に関することで、私の関心のないものはない」です。

それは精神疾患、つまり、脳を病むというのは「人間が病む、人生が病む」という側面があるからでしょう。

さらに考えてみると、内科や外科など身体科が心筋梗塞や癌のような確かなもの(=疾患単位)に立ち向かっているのに対して、私たち精神科は現象に立ち向かっている、という感じもあります。

そんな診療姿勢とも関係するのでしょうか。私は美術品、宝石といった物より、心を伝える言葉、文字にいっそう心を惹かれます。
私にはあの宝の山、正倉院御物より万葉集の方が比較にならないくらい魅力的なのです。

雪国で春を迎えると必ず思い出す歌―

 (いわ)ばしる垂水(たるみ)早蕨(さわらび)

 (も)え(い)づる春になりにけるかも(万葉集より)

 間もなく春ですね。

2010/02/19


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