山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.128

心気症はＤＮＡの叫び　

若い人で「死んでやる！」と家族を脅す人がいます。

　お年寄りで「死んでやる！」と言う人はあまりいません。
　自分から死のうとしなくても向こうから“お迎え”が来ます。

　若い人は自分から死に向かっていますが、お年寄りは死が自分に向かって来ます。

　ところで、お年寄の方で体の不調を気にし、しきりに訴える方がいらっしゃいます。

　脈が速い、血圧が高い、頭が病める、口が渇く…
　脈も血圧もあれば良いじゃないかと思うのですが、本人は苦にして訴えます。

　こんな身体症状にこだわる精神疾患を「身体表現性障害」と言い、それと似ていますが、そんな身体症状は重大な病気の兆候ではないかと恐れ怯える状態を「心気症」と言います。

　慣用的に、併せて心気症と言うこともあります。

　前者は症状に悩み、後者はやがて来る死に悩んでいます。

　心気症は中年が、身体表現性障害はお年寄りが多いですが、これは当たり前。

　片や助からなかったらどうしようと思いますが、片や助からないのは仕方ないと腹の底では思っていますから、せめて、このつらさを何とかしてくれ、と考える訳ですので。

　若い人でも身体表現性障害の人がいます。
　そういう人に「本末転倒。体より人生です」と説明するのですが、なかなか通じません（お年寄りにはもっと通じません）。

　実は、お年寄りの身体表現性障害、中年の心気症をじっとみていると、あの数々の症状は、ＤＮＡの叫びじゃないかと思えて来るのです。



　　あゝ　おまへはなにをして来たのだと……
　　吹き来る風が私に云ふ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　中原中也

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