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思い出し、語り伝える
帰還兵だった男性がテレビで言っていました。
「慰霊祭なんて行かないよ。何が慰霊なんだろうね。俺には何が鎮魂か、何が慰霊か分からないんだよ」
紙一重で、ある人は亡くなり、ある人は生き残ったとなれば、生き残った人が、何が慰霊なんやらと思うのは当然なんでしょう。
ところで、ごく親しい人が亡くなった時の悲哀反応は、症状はうつ病に似ていても、うつ病とは別に「死別反応」という
つまり、やむを得ないこととはいえ、医療に助けを求めるほどになったら診断して治療しましょうと言うことです。
そんな例―
@ペットが亡くなり
ペットの犬と暮らしていていた80代の主婦。
犬が亡くなり、すっかり落胆し当院受診。
「もう、がっかりして。何も考えられず、何もやる気になれなくて…」
「主人が亡くなった時より悲しくて…もう」
亡き夫も「もう」と言いたくなるでしょうが。
A姑が亡くなり
お嫁さん「いろいろやって来ても、ずっと嫁姑だったと思っていたのですが、亡くなってから、すっかり力が抜けて…ああも出来たのでは、などと考えたりして…」
アンビバレント―好きだけど嫌い、嫌いだけど好き―な気持ちを言われます。
死者への思いはそれぞれですね。
筆者は、その人を思い出す、その人のことを人に伝える、それが一番の供養だと思うのですが。
精神科医はみな胸の中に
悲しい墓標を持っている
中井久夫
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