山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.115

薬は呼び水、治療は添え木　

現在、精神疾患の治療は何より薬が第一になってきていますが、その前にきちんとした診断が必要で、それには患者さんの人となりを理解しなければならず、そのためには、人間とは何か、生きるとは何か、善悪とは何か……

そんな答えることも覚束ないようなことをいつも考えさせられています。

そして、そこからまた戻って、目の前の患者さんの症状、症状の原因となっている疾患に向き合います。


（１）　薬は呼び水
　ある程度の見通しを立てて薬を選び、経過を見ながら微調整をしていきますが、そんなことを繰り返していると、つくづく、薬は患者さんにないものを補う、あるいは患者さんを変えるというのではなく、患者さんの本来持っている回復力を促すものだと思うようになります。

　ですから、回復の様子が見えてきたら、その回復力を殺がないようにし、薬に合わせた体にならないようにする。
　これが大切で、薬は呼び水と思います。


（２）　治療は添え木
　そして、治療が進み、次第に症状は消え、本来のその方に戻るのが見えてきますが、そうなるとしめたもので、今度は終了を目指して治療から少しずつ手を引きます。

　つまり、苗木が弱く、傷つきやすい時には添え木で支えて風雨に耐えるようにしますが、やがてすくすくと大きくなると、添え木は不要になります。そんなイメージです。　治療は添え木と思える所以ですね。



空と海
青ひとすじの果てしより
湧き来たるかも瞼毛をぬらす
　　　　　　　吉野せい（17歳）

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