山下メンタルクリニック - 新潟県小千谷市の精神科 心療内科 神経科

No.105

睡眠の効用 

　睡眠には単に心身の休養だけでなく、成長ホルモンの分泌を促し（寝る子は育つ）、記憶を整理し、免疫力を高め、体の傷・心の傷を癒やす…などの働きがあります。

　例えば―
�@医者から「癌です」と言われ、が〜ん！（「がん」と言われると大抵「が〜ん」とします）。
�A借金が返せない！家も土地も差し押さえられる！
�B入試に落ちた！お、お、お先真っ暗！
などなど。

　人生一寸先は闇。何があるか分かりません。
こんな時は頭が真っ白になり、とても冷静な判断はできず、おろおろするばかりです。

　そんなぎりぎりの状態に追い詰められた時、頭がいっぱいで何も考えられない時、いったん寝てみるのが良いのです。
寝て起きると、今までの絶望的な気分が少し薄れ回復の兆しを感じます。

　この「寝てみる」というのは、ちょうど、妙齢の女性が思いがけず死体を見た途端に、う〜んと言って気絶するのと似ています。これを人工的にやるようなものです。
　女性がショックを受けて倒れるのは血管迷走神経反射ですが、寝て起きて立ち直るのは、情報が整理され冷静になったからだけでなく、前頭葉ばかりか脳幹も大脳辺縁系も、脳全体が団結して危機に対処したからではないかと思われ、これは本能的な認知療法と言えるものでしょう。

　頭が真っ白になるような危機的状況に直面したら、まず寝てみることをお勧めします。


牀前月光を看る
疑うらくは是地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思う
　　　　　　李白「静夜思」

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